アグラに到着した私たちは、安宿を探し一部屋をシェアすることにした。おかげで、一泊¥300ぐらいでとまることができた。宿代をうかしたおかげで、晩飯は少しましなものが食えそうだ。インド旅行を始めた頃は、美術館だ、博物館だ、名所旧跡だと、いろいろ歩きまわったが旅も半月を過ぎると、移動することにに疲れ、考えることは、いかに安宿を見つけようかということと、今日は、何を食べようかという二つのことしか考えなくなっていた。
ともあれ、タージマハールにはとりあえず行ってみることにする。白亜の建造物は、ヤムナー河の岸辺に立てられている。タージマハールは、ムガール帝国のお妃の壮大なお墓だということだ。そのタージマハールの内部には、靴を脱いで入る。これは、イスラムのモスクに入るときや、ヒンドゥー教の寺院に入るときと同様のしきたりらしい。インドの猛暑の中靴を脱ぎ、大理石の上を素足で歩くのは、思いのほか気持ちのいいものだった。廟の内部は外部より涼しく、外気に熱った体を十分癒してくれた。タージマハールを訪れるなら、満月の夜がベストらしい。月明かりに照らし出された、大理石のモスクは、実に荘厳で幻想的らしい。その時のアグラ滞在の時期は、満月の時期から外れていて、その景観は眺めることはできなかったものの、白亜の壮大な墳墓は、私の心にはっきりと残されている。
ムガール帝国の皇帝が、熱愛した妃の死をいたみ建てられたのがタージマハールだが、その妃とはいったいどのような女性だったのか気になる。右に挿入した絵画は、インド旅行中に買い求めたものだが、結構気に入っている。サイズは文庫本サイズだ。どのようにして描かれたのか、技法はよく分からないが、土産物屋で購入した割には良いできだと思っている。インドアーリア系の、彫りの深い顔立ち、ふくよかな肢体。衣装は、インドの民族衣装サリーではなく、イスラム系のような雰囲気を持っているように思う。このような考察は、私は、この分野の専門家ではないので間違っているかも知れない。が多分、このような容貌だったのではないかと空想に耽っている。
ついでに、別の場所だか、マハラジャの肖像画も買い求めた。こちらは彩色が施されている。本のどこかのページらしく、裏面には文字がしたためられている。この文字は全く解読不能である。
インド、イスラム文化圏の細密画は一見の価値があるように思う。実に繊細な描写が施されている。この二点の絵画は、私の愛蔵品の中の二つとなっている。タージマハールの話から、話題がそれてしまったが、この二枚の絵画を是非とも、多くの方々に鑑賞していただきたいと思っている。