久々に蔵書票の新作の制作に取り掛かりました。
ヴィクトリア調の英国の街並みというテーマでの制作を票主の方からうけました。
票主のK先生は、精神科医でもあり、書票のコレクターとしても著名なかたです。
これまでもたびたびK先生の蔵書票は制作させていたたきました。
今回の新作のイメージを探っていたら、オスカー・ワイルドの肖像を思い出し、私の方から、是非ともオスカー・ワイルドの肖像で制作させていただけないものかと、打診いたしました。文学好きでもある先生から、オーケーの連絡があり、早速制作にとりかかりました。背景に、ヴィクトリア調の建物を配しました。
先ずは、オスカー・ワイルドの顔から彫り始めます。
アンニュイで、どこか耽美的なワイルドの肖像はなかなか表現が難しいです。
この段階では、少し表情が硬くなってしまっています。
もう少し、優しさを出したほうがいいように感じました。
目、瞳の彫り方が強すぎます。
目の表現をやわらかくしつつ、衣服を彫り始めることにしました。洋服の襞、明暗を彫っていきますが、質感を第一に考え作業を進めます。
かなり緊張感を持った作業です。集中力が要求されます。
木口木版画の制作は、実はこの緊張感との付き合いが最も重要です。私にとっては、この緊張感に包みこまれている時間が至福の時間なのです。
時の経つのを忘れてしまうるぐらいの、濃密な時間に、五感が吸い込まれていきます。
彫り始めて3日目ぐらいです。
緊張感が途切れる時期でもあります。背景の、ヴィクトリア調の街並みを彫り始めました。
髪の毛の質感も考慮して、ハイライトを強調してみました。
表情も少し柔らかくなったようです。
エクスリブリスという文字も彫り込みました。
ここまでの彫りには、3日間、約15時間を要しました。
ここまでくれば大体完成が予測できます。大きな失敗はないようです。
今回公開はここまでです。背景の彫り、衣服の明暗、顔の表情を注意深く掘り進めて、おそらく、あと4~5日で完成すると思われます。
完成したら、プリントした作品を公開いたします。