武蔵野美術大学で木版画を専攻している学生に、木口木版画の実技を指導を始めて、早いもので今年で七年目をむかえた。
毎年、一ヶ月ほど実習を担当いている。
木口木版画の実習は、毎年同じようなスタイルで進めているが、大学の版画工房で出会う学生達との会話の中から、個々の学生の考え方や、版画への取り組み方を考慮し、指導方法を微妙に変化させていくこ とにしている。
武蔵野美術大学では、木口木版画実習の期間が約一ヶ月という、比較的長い時間、実習を継続することができるので、まとまった制作のプランを学生達に提示することが出来る。
今回の実習では、木口木版画の原点とも言うべき、書物という形式での木口木版画の概念を、意識しながら制作に励んでもらおうと考えている。
書物に使われた、古い木口木版画の作例、図版等を学生達に鑑賞してもらい、新しい制作の契機の模索に役立たせようと思っている。
したがって、木口木版画の実習の作品提出のスタイルは、本の形式を目指している。
とはいっても、一冊の本を仕立てるほどの時間は無いので、ふたつ折りした紙、つまり本に見立てれば、4ページ分になるが、そのスペースを自由に活用して、自分の世界を展開させていくように指導している。
この課題は学生に実習の期間中、数種類の作品を制作させるための、有効なきっかけとなっているようだ。
別に多作をよしとしているわけではない。実習の期間中の制作は、1点でもかまわない。
美術大学、版画専攻を選択したからには、ひとつの課題に、それぐらいの情熱を注ぎ込んで制作に励んでもらいたいものである。
二回目の講義は、木口木版画に使われている、様々なビュランの説明を試みてみようと思っている。